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第8回 迫るレセプトのIT化 -情報漏えいの危険性- (2009年11月19日陸奥新報掲載) 2011年から医療費の請求手続きがIT化される予定です。患者さんへの影響は少ないように見えますが、請求されたデータの取り扱いが大きく変更になるため、情報漏えいの危険性が高くなります。さらに、社会保障番号等による情報の名寄せが行われると、今よりも医療が制限されそうです。

▽個人情報守れるか
 医療費の請求書(レセプト)には患者さんの氏名、生年月日、健康保険証番号、傷病名、検査や手術など治療内容、かかった医療費などが記入されます。流産や遺伝子情報など機密性の高い個人情報も含まれています。

 厚生労働省は情報漏出対策としてガイドラインを作りましたが、国の予算が厳しくなる中で、だれが対策費用を負担するかも決まっておらず実効性は不明です。

 生命保険会社や金融機関などで頻発する大規模な個人情報漏出事件からも分かるように、最終的には人的なセキュリティーが鍵を握っています。いくら罰則を重くしても、それだけで流出をゼロにすることはできませんし、一度漏れた情報はもとに戻せません。

 米国では民間の医療・生命保険会社が患者さんの遺伝子情報を利用することについて規制されていますが、日本では議論は始まったばかりで制限はありません。プライバシーを重んじるフランスでも医療のIT化計画が凍結されました。個人情報の利用について勧告や監査を行っている委員会が、計画に反対したためです。

▽「標準化」の弊害も
 IT化によって生涯にわたり保存される患者情報をもとに、「医療の標準化」が予定されています。

 「標準化」とは、一人ひとりの状態に合わせて治療する「オーダーメイド医療」に対し、治療期間や治療方法を決めたガイドラインに従って治療する「レディメイド医療」を行うことを言います。その結果、標準からはみ出た医療は自己負担になり、患者さんにとってはマイナス面が多くなります。

 「医療の標準化」の典型は、リハビリ日数制限です。ゆっくりと改善する人は日数制限以後、医療保険で治療することができなくなりました。

 また健康保険証、介護保険証、年金手帳などを1枚にまとめた「社会保障カード」がレセプトのIT化に合わせて導入されれば、払った保険料と使った医療費、社会保障費が比較され(社会保障個人会計)、死ぬ直前の医療費が制限される時代が来るかもしれません。さらに、遺産が残った時には社会保障が手厚すぎたと遺産から没収する方法も検討されています。

▽時間かけ議論を
 レセプトのIT化は、膨大な紙の無駄使いをなくすために必要だという意見もあり、計画は急激に強制的に進められようとしています。例えるなら新聞の印刷をやめ、2年後からすべてインターネットで記事を読むようにするのと同じくらい乱暴な進め方です。

 国民的な議論が圧倒的に不足しています。国民がコントロールできるブレーキがないまま、「行政の効率化」というアクセルを踏めば、暴走を止めることはできません。

 青森県保険医協会では、IT化計画は国民の同意を得ながら時間をかけてゆっくり進めるべきだと考えています。

レセプト情報の流れ


青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会副会長、県社会保障推進協議会会長
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