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第23回 TPP参加でどうなる? 日本の医療 (2011年2月17日陸奥新報掲載)

 皆保険制度の崩壊も

 環太平洋連携協定(TPP)に関するニュースが、毎日のように報道されています。加盟国間の関税を100%撤廃し貿易の自由化を目指すもので、人や物、お金などの移動規制がなくなります。報道の多くは農業、経済への影響を取り上げていますが、医療分野も例外ではありません。

 菅直人首相は年頭所感で「平成の開国」を掲げ、TPP参加の方針を明らかにしましたが、交渉の具体的な内容は明らかになっていません。内閣の方針、米国が目指している輸出倍増戦略などから予想される、医療分野での市場開放についてまとめてみました。

 政府の行政刷新会議は1月26日、「規制・制度改革に関する分科会」を開き、規制・制度の見直しを提言する報告書をまとめました。その中の医療分野に「人材の不足と偏在を解消するため外国人人材の活用等も検討する」「国際医療交流による外国人患者・従事者を受け入れ、世界に貢献できる日本の医療を実現する」とあります。

 将来は「外国人医師・看護師が日本で活躍する」ことも期待できますが、他国で見られるように日本の優秀な医師や看護師が海外に流出する可能性もあり、結果的に医師・看護師不足になることも危惧されています。




 ▽医師不足に拍車?
 また1月に新設された「医療滞在ビザ」、医療と観光を組み合わせた「メディカルツーリズム」によって多くの外国人が日本の医療機関を受診することが期待されています。逆に日本人患者の海外渡航は少ないと予想され、国内の医療機関が対応する患者数が増える可能性があります。医師の海外流出に国内の患者増が重なれば、医師の長時間勤務、人材不足がさらに深刻化する負のサイクルに落ちます。また医療が商品化されると、お金持ちの外国人患者に医療資源が投入され、日本国民の医療が切り捨てられるかもしれません。

 一方、海外で使える医薬品や医療機器が、日本で認可されていないために使えない「ドラッグラグ」「ディバイスラグ」が問題になっています。これに対し報告書は「新規技術や製品の審査、評価にあたっては迅速かつ円滑に進める」としています。しかし輸入血液製剤による薬害エイズ事件、中国製の入れ歯から有害金属が見つかった事件などの教訓を生かすなら、同時に安全性に対する配慮も必要です。

 昨夏、オバマ米大統領は「大統領輸出評議会(PEC)」のメンバーを発表。大手の製薬会社や生命保険会社のCEOが参加し、輸出倍増計画に協力しています。医薬品、医療保険の市場開放も重要な戦略品目です。

 ▽目指すは混合診療
 民間医療保険は皆保険制度(保険診療)ではあまり売れません。市場拡大には保険のきかない医療(自由診療)部分を大きくする必要があります。これに呼応するかのように報告書では「国民皆保険制度を堅持しつつ、公的保険の適用範囲を再定義する」とされ、保険診療を縮小し自由診療を拡大させる「混合診療」を目指しています。

 そのモデルは歯科医療にあります。インプラント(人工歯根)などの新医療は保険診療に取り入れられず、自由診療として多額の窓口負担が必要になっているからです。

 医療の財源だけで考えるとTPP参加は魅力的なのかもしれませんが、将来の医療内容を国民に約束しない参加は皆保険制度の崩壊につながります。全国保険医団体連合会はTPP参加に反対し、日本医師会も危惧を表明しています。


 ご質問やご意見は、県保険医協会(ファクス017―774―1326)までお寄せください。


(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
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