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第27回 明らかになった「社会保障改革案」 -消費増税頼み険しく-
(2011年6月16日陸奥新報掲載)

 政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」は2日、今後の社会保障改革のたたき台ともいえる「社会保障改革案」をまとめました。今月中の成案を目指して、さらに検討される予定です。

 改革案は「子ども・子育て」「医療・介護」「年金」「就労」「その他」に分かれて提案されていますが、主に消費税率を5%から10%に引き上げるための理由が書かれています。負担と給付の仕組みが大きく変わる可能性があり、注目する必要がありそうです。

 

 

 ◇マンパワー増強へ

  医療の充実を目指し急性期患者に対応する職員を増やす予定です。また平均在院日数を短縮し、外来受診の適正化を図ることで、外来患者数が現在より5%程度減少する予定です。医療の現場から考えると患者さんが行き場を失うことが予想されますが、医療から介護に移ることで対応しようとしています。

 介護では在宅介護の充実、ケアマネジメントの機能強化、居住系サービスの充実等が上げられました。医療・介護ともマンパワー増強を目指し、現在の従事者462万人を2025年度には1・6倍の739万人にする予定です。

 

 ◇垣根取り除くには

  改革案には医療・介護の地域包括ケアシステムの確立などが掲げられていますが、両者の垣根を取り除き一緒に考えるためには解決するべき問題が山のようにあります。

 介護保険は00年からスタートし、40歳以上の人は健康保険料の他に介護保険料を納めることになりました。当時の国の説明は「健康保険料の値上げではない。介護と医療は異なったサービスなので新しい保険料が必要」と説明されましたが覚えていますか?

 法的にも、医療は健康保険法による健康保険料、介護は介護保険法による介護保険料を支払うことになっており、歴史的に異なったレールを進んできました。同じレール上を走るには全ての規格を見直さなければ脱線してしまいます。

 

 ◇膨らむ社会保障費用

 制度の「機能強化」に必要な医療と介護分野の追加所要額は15年度段階で6000億円。さらに短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、低所得高齢者の介護保険料軽減なども含めると同年で1兆6000億円程度が必要と見積もられ、25年度でも2兆3000億円と説明されています。

 しかし右記の改革案は自然増との関連では説明が不足しています。今後の15年間は団塊の世代が高齢化し、医療・介護費の自然増が見込まれています。政府の社会保障費用推計によると15年度の医療費は現在より5・3兆円増えて38・9兆円、介護費は2・7兆円増の1・6兆円とされています。

 他方、子育て・年金・医療・介護・就労等にあてる安定財源を消費税とし、15年までに段階的に10%まで引き上げることになっています。その中では「高齢化に伴う増加分」は消費税1%(2・5兆円)とされていて=図、自然増額とは異なった予測が立てられています。まして25年度の推計医療・介護費用(それぞれ53・3兆円、19・7兆円)の額が正しければ、とても消費税では賄えないことになります。

 改革案には、東日本大震災への対応は除かれています。国民の理解を得るためにも、被災地の社会保障が確保されることが最低限必要です。また大きく報道されていませんが5月31日、65歳以上の保険料上昇を抑えることなどを柱とする「介護保険法改正法案」が衆議院本会議で可決されました。多くの人が知恵を絞り社会保障改革案を作るべきだと考えています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)

 

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