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第29回 停電から人工呼吸器使用者を守れ -命の危機 早期対応を-
(2011年8月18日陸奥新報掲載)

 3月11日の東日本大震災では、広範囲にわたって長時間の停電が続きました。節電効果や電力の緊急融通策などで今夏の電力不足はかろうじて回避できていますが、計画停電の可能性など多くの不安が残っています。特に在宅治療で人工呼吸器を使う患者にとって、わずかな時間でも停電は生命の危機に直結する大問題です。患者団体は国の対応が不十分だとして、緊急に対策をとるよう訴えています。

 

 ▽長期停電に病院混乱

 地震で停電になった後、人工呼吸器使用者の中には緊急入院したり、家族らが発電機を探して飛び回ったケースがありました。電話も通じないため、かかりつけ病院の被災状況も把握できません。残り少ないバッテリーで器械を動かしながら、病院に向かうべきか悩んだ人もいました。

 受け入れ先の病院でも数日間電気が復旧しなかったため食事を提供できなかったり、自家発電用の重油が不足するなど、綱渡りの対応だったことが報告されています。

 厚生労働省は3月13日になって、計画停電時に医療機関がとる対策を事務連絡、人工呼吸器使用者への停電対応が始まりました。

 

 ▽内部電源にも限度

 人工呼吸器にはバッテリーを内蔵している器械と、していない器械があります。前者は停電になってもすぐ停止しませんが、後者は作動しなくなるので、患者は大変危険な状態になります。そのため器械が止まった場合は、介護者が「蘇生バッグ」を用いて手動で呼吸を確保する必要が出てきます。

 また内部バッテリーを搭載していても、可動時間は機種によって数十分から10時間以上と開きがあります。内部バッテリーが切れると外部から電源を取り入れなければいけません。

 さらに、たんを自力で出せない人には「吸引器」を使いますが、これも電動のため、停電時には足踏み式のものなどが必要になります。

 

 ▽備え不十分―都調査

 東京都は6月、都内の訪問看護事業所を対象に「人工呼吸器使用者の停電への備えに関する調査」をしました。それによると内部バッテリーがない器械を使用している人が35%、外部バッテリーを準備していない人は37%にのぼりました。蘇生バッグ、足踏み式吸引器を保有していない人はそれぞれ31%、77%でした。

 

 

 ▽都が独自支援創設

 これを受け東京都は、2011年度補正予算で「在宅療養患者緊急時対応支援事業」を創設。医療機関を通じて外付けバッテリーや自家発電装置、蘇生バッグなどを患者に無料貸与する支援を始めました。

 患者団体は都の取り組みを評価すると同時に、対象範囲を限定しないよう訴えています。また、このような支援は他県では進められておらず、停電時の患者の安全を確保するためにも、全患者に支給するよう要望しています。

 全国の人工呼吸器使用者の実数は正確に把握できていません。しかし診療内容などの実態について調べた国の調査(06年)から、在宅で人工呼吸器を使う患者に対して加算される「在宅人工呼吸指導管理料」は約1万3000人に、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」は約12万人に算定されていることが分かっています。決して少ない人数ではありません。

 7月29日に改正障害者基本法が成立、8月5日に公布されました。全国の人工呼吸器使用者が安心して在宅生活を送れるよう、早急な国の対策が求められています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)

 

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