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第30回 受診時定額負担とは -患者支払額に上乗せ- (2011年9月18日陸奥新報掲載)

 医療費の単価を決める診療報酬の改定が2012年4月に予定され、さまざまな審議会で具体案が検討されています。今回は7月に報告された「社会保障と税の一体改革成案」の中で提案されている「受診時定額負担」について取り上げます。

 

 ▽通院のたびに徴収

 現在はかかった医療費の一定割合(1~3割)を医療機関の窓口で支払っています。受診時定額負担は、医療費の患者負担に一定額を上乗せする制度として提案されています。

 「低額」負担―聞くと医療費が安くなると勘違いしそうですが、実は負担が増えます。今のところ通院のたびに100円程度を上乗せして払ってもらうことが検討されています。

 例えば医療費が5000円かかると、3割負担の人は1500円を支払います。これに100円の定額負担が導入されると、100円が上乗せされ患者負担は1600円になります。

 また処方せんをもらうため再診すると医療費は1380円。1割負担の人は140円(138円を四捨五入)で済んだ支払いが1・7倍の240円に。受診回数が多いとさらに負担が増えます。

 

 

 ▽長期高額医療に対応

 社会保障と税の一体改革成案では「初診、再診時に毎回100円を負担することで1300億円を財源として確保し、高額療養費制度を見直し負担軽減にあてる」となっています。長期にわたって高額の医療費がかかる患者らの経済的負担を減らすことと併せた導入を検討しています。さらに成案は「低所得者にも配慮する」と加えています。

 

 ▽多くの団体は反対

 受診時定額負担に対し、多くの団体は反対の声明を発表しています。

 日本医師会は、高額療養費のあり方を見直し、患者負担を軽減することを評価しつつ、「財源を患者負担に求めるべきではない。当初は定額100円であっても、いったん導入されれば、その水準が引き上げられていくことは、過去の患者一部負担割合の引き上げを見ても明らかである」として、導入に断固反対の姿勢を表明しました。

 全国保険医団体連合会(保団連)も「高齢者、乳幼児、慢性疾患患者など受診頻度が多い人ほど負担が重くなり、これまで以上に受診が抑制される」と反対しています。

 また保団連が行った10年度受診実態調査で、約4割の医療機関が「患者の経済的理由から、治療を中断または中止した事例があった」と答えるなど、保険料と窓口負担が限界にきている人が増えています。

 

 ▽上乗せ額増える恐れ

 一方、受診時定額負担を主張している吉川洋氏(東大教授)は6年前、「保険免責制」を主張しました。医療費から免責額(当時は1000円程度を検討)を引いた分に保険給付するものでしたが、各方面から反対され実現しませんでした。

 例えば免責額が100円、医療費が5000円なら、100円を引いた4900円について保険給付します。3割負担なら1470円ですが、窓口で実際に払うのは、免責額100円を加えた1570円です。

 受診時定額負担は、過去に実現しなかった免責制よりも自己負担が増えることになります。

 日本福祉大学教授の二木立(にき・りゅう)氏は受診時定額負担について「100円が段階的に引き上げられれば事実上、保険免責制と同じ機能を果たす」「公的保険の特性を無視し国民皆保険の理念を否定」するものとして警鐘を鳴らしています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)

 

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