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第31回 年々上昇する日本の貧困率 -子育て世代にも格差- (2011年10月20日陸奥新報掲載)

 ニューヨークのウォール街から始まった「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」と呼ばれる抗議デモは、会員制交流サイトの「フェイスブック」などを通じて欧米、アジア各地にまで広がり、10月15日には“地球を一周”しました。デモのリーダーは特にいませんが、多くの人が参加し、格差社会の問題などを訴えています。今回は日本の貧困率と格差について考えてみましょう。

 

 ▽高い子どもの貧困率

 2011年3月期決算の国内上場企業で1億円以上の役員報酬を受け取ったのは294人と報じられましたが、一方で日本の貧困率が年々上昇している結果も公表されました。

 全国民に対する低所得者の割合や経済格差を示す「相対的貧困率」は、3年ごとに行われる厚生労働省の「国民生活基礎調査」を基に発表されています。1年間の所得から所得税、住民税、社会保険料、固定資産税を差し引いた国民の「可処分所得」を高い順に並べ、中央となる人の額(中央値)の半分未満の人の割合が相対的貧困率です。

 09年は年間所得112万円未満が貧困の基準となり、データのある1985年以降で最も高い16.0%でした。低所得世帯で育つ17歳以下を抽出した「子どもの貧困率」も、06年比1.5?(ポイント)増(23万人増)の15.7%に上りました。

 今回の米国抗議デモの背景にあったともいわれている米国の貧困率は、底を打った00年の11.3%から上昇し続け、10年は15.1%となりました。直近の数値で比べると日本は米国より貧困率が高いことになります。また米国でも18歳以下の子どもの貧困率の高さが問題になっています。

 

 ▽世帯人数多いほど貧困に

 一方、「ジニ係数」と呼ばれる格差の指標があります。こちらも3年ごとに厚労省が行う「所得再分配調査」において報告されています。数値がゼロに近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きいことを表しています。貧困率の調査年とずれがありますが、ジニ係数も1996年は0.4412だったのが2008年には0.5318と増加しています。格差が拡大していることを示しています。

 総務省の「就業構造基本調査」に基づく勤労世帯の貧困率=ワーキングプア(働く貧困層)の割合は、1997年は12.8%でしたが2007年には19.0%となっています。

 また世帯人数が多いほど貧困率も高く、これらの結果から「ワーキングプアは非正規雇用の若者世代」というこれまでの分析と異なる、子育て世代にもワーキングプアが増えていることが示されました。

 

 

 ▽格差の解消には

 お金のことを心配せずに必要な治療を受けられるよう、医療費の窓口負担の解消を目指す「ゼロの会」が活動を続けています。

 また人間らしい生活と労働の保障を実現し、貧困問題を社会的・政治的に解決することを目的に07年、「反貧困ネットワーク」が設立されました。16日には法政大学市ケ谷キャンパスで集会があり、東日本大震災と貧困をテーマに分科会やシンポジウムが開かれました。福島県の教育関係者は子どもの貧困について指摘し、教育現場における「応益負担」をやめるよう訴えていました。

 6人に1人が貧困層という日本。経済的な事情で必要な教育や医療が受けられずに新たな格差が生まれています。そのような「負の連鎖」を断ち切るためにも、憲法25条(生存権)に基づく対策が求められています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)

 

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