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第33回 高齢者は医療費を使いすぎ? -新たな制度設計必要- (2011年12月15日陸奥新報掲載)

 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は、2008年4月にスタートしました。来年4月で5年目を迎えますが、廃止を求める多くの高齢者の声に押され、政権交代直後は、13年3月の制度廃止予定となりました。しかし廃止の実現が不透明になる中、12年4月には保険料の改定が予定され、一定の値上げは避けられそうにありません。

 

 ▽財源論に重点

 廃止方針を受けて国の高齢者医療制度改革会議は、10年12月20日に「最終取りまとめ」を行いました。「後期高齢者医療制度を廃止し、国保か被用者保険に加入する。国保の都道府県単位化を実現し、安定的・持続的な運営を確保する」という方向性が打ち出されています。

 その後、廃止後の新たな制度についての議論、法案提出は遅れていましたが、ここにきて議論が活発になってきました。

 地方自治体からは、財源が確保できないなどの理由で、制度廃止の先延ばしを求める意見も出されています。議論の中心は、医療費を誰が負担するかの財源論に重きが置かれ、高齢者と若者世代の対立を強調する資料が多くでています。

 

 ▽医療費は若人の4・7倍

 「高齢者は医療費を使い過ぎている」という主張について検証してみましょう。

 毎年、国が発表している「後期高齢者の医療費の特性」(09年度)では、後期高齢者1人当たり、若人(後期高齢者医療制度以外の医療保険加入者)の4・7倍の医療費を使っていること、さらに高齢になるほど医療費は増大し、負担との関係でも高齢者ほど負担が少ないことが強調されています。

 また20~64歳、65~69歳、70~74歳、75歳以上と年齢別の平均収入と医療費、負担額(いずれも1人当たり)を比べ、70~74歳は医療費の負担率が、他の年代に比べ最も少ないという資料も提示されています。それを元に国は現状の1割負担を2割に引き上げようと誘導しています。

 

 

 ▽79歳までに1516万円負担

 次は青春を戦後の復興に捧げてきた1930(昭和5)年生まれの人について考えてみます。生まれた時は約195万人いましたが20歳(50年)の時点で約160万人まで減りました。皆保険が始まった30歳時(60年)は155万人、最新の数値である80歳時(2010年)は、約98万人になりました。

 物価や貨幣価値など経済状況は昔と違いますが、国の資料を基に単純に数値を当てはめて医療費と負担額を計算してみました。若い頃は健康にも恵まれ医療費を支払わずに保険料を払い続けました。その間、保険料をたくさん支払ったにもかかわらず、若くして亡くなった方もいます。

 1930年生まれの人の保険料の負担額と医療費の給付額を計算すると、74歳までは保険料を払い過ぎています。75歳を過ぎると給付額の方が多くなりますが、その差額は1人当たり5年間でおよそ275万円、1年では55万円にすぎません。

 同年生まれの方が79歳までに負担した総保険料は1人当たり約1516万円。過去50年間のGNP(国民総生産)の伸び率や、保険料の支払いを定期預金に回した場合の利息を考えれば、まだおつりがくる計算になります。

 戦後の困難な時代を背負い、現在の日本を作り上げた高齢者に感謝し、「高齢者を国全体で支える」という哲学に基づいた新しい制度を設計する必要があります。次回は12年4月以降の後期高齢者医療制度の保険料について考えてみます。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)

 

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