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第34回 後期高齢者医療制度と社会保障 -厳しさ続く保険財政- (2012年1月19日陸奥新報掲載)

 政府・与党は2011年12月30日、後期高齢者医療制度を廃止して新制度へ移行するための「高齢者医療改革関連法案」を次の通常国会に提出し、早期審議入りさせる方針を示しました。年が明け1月6日には「社会保障と税の一体改革」の素案が決定されました。今回は、後期高齢者の保険料と社会保障の財源はどうあるべきかについて考えてみます。

 後期高齢者医療制度の費用負担の内訳は、スタート時点(08年度)で高齢者が1割、現役世代からの支援が4割、公費が5割(国:都道府県:市町村=4:1:1)でした。

 その後、高齢者人口の増加、医療費の増加、現役世代の人口減少によって高齢者負担率は徐々に上昇し、12年度の保険料改定では10.51%に増加すると見込まれています。

 一方、支援する市町村の国民健康保険(国保)をはじめ各保険者の財政状況は厳しさを増しています。特に、市町村国保は、会社員とその家族らが加入する協会けんぽや組合健保、公務員らの共済組合に比べて高齢者の割合が多く、一人当たりの医療費が高くなっています。さらに加入者の平均所得が低いために、公費負担(給付費の5割)があっても“台所は火の車”になっています。

 

 ▽賦課方式は限界?

 現在の健康保険制度には、現役世代が多くの保険料を負担し、高齢者を支える「賦課方式」が採用されています。前回も紹介しましたが、現在の高齢者は働き盛りの戦後の困難な時代に、多くの保険料を負担してきた世代です。

 人口が増え続け、経済が右肩上がりの時は、賦課方式は何ら問題を生じませんでしたが、デフレと人口減少時代には対応できなくなっています。消費税を5%から10%に引き上げても後期高齢者医療制度、市町村国保の保険財政には「焼け石に水」です。

 「新たな福祉国家を展望する」(福祉国家と基本法研究会編、旬報社発行)によると、三つの原則が紹介されています。①最低生活費への非課税と保険料免除②総合所得に対する累進課税原則③企業の社会保障拠出・負担責任の強化です。

 所得税の現状では、税を支払うかどうかの年収基準「課税最低限」は、夫婦と子ども2人の標準世帯の場合、生活保護の最低生活費よりもはるかに低く、最低生活費非課税の原則が守られていません。

 また、戦後は所得が高くなるほど高い税金を払う「総合所得累進課税」が原則とされてきましたが、最近は累進制が弱められ税率のフラット化が進み、配当やキャピタルゲイン(有価証券譲渡益)など金融所得が優遇されています。

 さらに、事業主の社会保険拠出はEU先進国とくらべても低くなっています=図参照。 社会保障財源で見ても米国並みですが、日本はヨーロッパの国々に比べて低いといわれています。

 

 

 ▽新たな社会づくり必要

 八方ふさがりの現状に、三つの原則を当てはめながら具体的な制度設計が必要です。

 そして財源問題と同時に、支え合う仕組みについても新しい哲学が必要になっています。被災地の復興では被災者がお互いに支え合いながら希望に向かって進み始めています。

 「現役世代が高齢者を支える」という考えは捨てて、「支えられる高齢者も他の高齢者を支える」「同じ時代に生きているみんなで支え合う」―そんな発想が大切だと考えています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)

 

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