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第39回 消費税増税と医療費 -病院や診療所に負担 (2012年6月21日陸奥新報掲載)

 消費税と社会保障の一体改革をめぐって国会では緊迫した状態が続いています。消費税が10%に引き上げられると、医療機関での窓口負担も増えるのではと不安に思っている人もいると思います。

 答えは「増えません」。しかし、良かったと胸をなで下ろすのはちょっと待ってください。消費税が10%になると病院や診療所が閉鎖になる可能性があるのです。今回は医療の消費税について解説します。

 

 ▽保険診療は非課税

 医薬品、医療機器の購入時、医療機関は消費税を支払います。医療機関が診療報酬を受け取る時に消費税を徴収できれば、普通の商品取引と同じです。しかし、保険診療は非課税のため、患者にも保険者(市町村や協会けんぽ、組合健保、共済組合など)にも消費税を請求できず、最終的に医療機関が負担します。

 1989年4月に消費税は3%でスタートしましたが、その時に消費税分として診療報酬が0.76%引き上げられました。さらに97年、消費税が5%に引き上げられると診療報酬も0.77%増えました。合計で1.53%が上乗せされ問題は解決済みといわれています。

 消費税が10%に引き上げられた場合の対応について国は、「非課税の取り扱いにする。高額投資に対する措置については今後の検討」とし、今回も診療報酬で補てんすることになりそうです。

 

 ▽損税2500億円

 医療機関が負担する消費税を調べた「控除対象外消費税の調査」(2007年、日本医師会)によると、医薬品・材料(1.12%)、設備投資(0.35%)、その他(0.74%)の合計2.22%(約8000億円)と報告されました。つまり、補てん分の1.53%が診療報酬に上乗せされても、0.69%(約2500億円)が医療機関の持ち出し(損税)になっていると推定されます=図参照、数値は四捨五入の関係で内訳と一致しない=。



 消費税が10%になると、医療機関の負担はさらに8000億円増える計算になり、対応策がなければ約1兆円の消費税(損税)を医療機関が負担することになります。

 これに対し、日本医師会は「存続が危うくなる医療機関も出現する」と警鐘を鳴らしています。

 「『税と社会保障抜本改革』入門」を執筆した西沢和彦氏(日本総研)は、「社会保障制度の維持・充実のための消費税率引き上げが、医療機関経営に打撃を与えるというパラドックス(矛盾)が生じる」としています。払い続けている消費税で今も苦しんでいる医療機関は、経営が破たんする可能性があります。

 

 ▽税金の二重払いに?

 一方、消費税が10%になった場合に、今まで通り診療報酬で補てんすれば、保険料を負担している国民や事業主が「医療現場の消費税を負担」し、国民は二重に消費税を支払うことになります。その額は1兆6000億円と推定され、財務省だけが「得」をし、患者も保険者も医療機関も苦しむ、何ともやりきれない仕組みが拡大することになります。

 

 ▽税還付を -日医など

 このような事態を避けるためにも、日本医師会や保険医団体連合会では以前から「ゼロ税率」を主張しています。ゼロ税率とは、「医療機関が支払った消費税は還付し、診療報酬でも手当てしない」というものです。そうなれば診療報酬の引き下げ(1兆6000億円)も可能で、保険料の負担も減らせます。

 自動車などを輸出すると、海外の最終消費者から消費税を徴収できないため、輸出企業には消費税分が還付されています。医療費の消費税も還付できれば、患者、国民、保険者の二重負担を解消することができます。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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