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第41回 被災地の医療再生目指しフォーラム -関係者の知恵結集を-
(2012年8月16日陸奥新報掲載)

 7月29日に、岩手県花巻市で「被災地の地域医療再生について考えるフォーラム」(青森県保険医協会など共催)を開催しました。全国から医師、医系学生、法律や行政の専門家をはじめ被災地域の住民など約200人が参加しました。



 巨大津波は多くの尊い命を奪ったほかに開業医も犠牲になり、もともとあった被災地の医師不足問題をより深刻にさせました。

 医療再生には、全国から多くの人が集まり知恵を絞り出す必要があります。そして、ゼロから始まる医療再生が成功すれば、青森県をはじめ全国各地の医療再生に大きなヒントを与えてくれるはずです。

 

 ▽各立場から提案

 井上英夫さん(金沢大学教授)の「大震災と住み続ける権利」と題する特別講演の後、地域医療再生を目指して8人のパネリストがさまざまな提案をしました。

 最初に、被災地山田町の佐藤照彦さんが、仮設の診療所ができても入院施設がなく苦労していること、生きる気力をなくしている人も集まれるよう、心の扉をたたく「お茶っこの会」を毎週開催し、参加者が増えていることを述べました。

 壊滅的な被害を受けた岩手県立高田病院の石木幹人院長からは、建設計画が進む新病院について説明がありました。病院が医療、介護、福祉の拠点となれるように、建設場所の周辺に高齢者住宅を配置する都市計画も紹介されました。医師確保では「若い医師に地域医療の面白さを分かってもらえる病院を作りたい」と結びました。

 

 ▽先進的な取り組み

 宮崎県延岡市からは医師不足対策として始まった「地域医療を守る市民条例」が紹介されました。条例では「医療機関」「市民」「行政」の責務を明確にし、市民も参加して「健康長寿を目指す」ことを宣言しています。

 また、医師確保対策として「院内開業制度」を導入している兵庫県芦屋市立病院からは、開業医と勤務医の連携がうまく機能していることや、勤務医の定年延長について提案がありましました。

 

 ▽医師確保へ問題提起も

 その後の討論では、震災後の介護について質問があり、介護サービスが機能しなかったこと、仮説住宅のバリアフリー化は自治体によって温度差があったことなどが明らかになりました。

 ほかには藤沢病院(岩手県一関市)が実践する「『病院/国民健康保険/住民の財布』を考える医療」への質問がありました。病院関係者は「予防や教育に力を入れ、受診回数と薬代を減らすことができれば、安い医療費でも(患者の)高い満足度が得られる」と、効率的なサービス提供について回答しました。

 医師確保については、「職業選択の自由(自由開業制)と医師不足地域での研修義務化が両立するように、論点を整理する必要もあるのではないか」との問題提起がありました。

 

 ▽将来に向けて

 被災地の医療再生には、何よりも医師確保が欠かせません。現在は大学医学部の垣根を越えて全国から医師が集まってきています。今後は若い医師が地域に溶け込めるシステム作りに期待が寄せられています。

 また地域医療再生の主役は住民です。医療関係者と行政と住民が、夢のある目標に向かって同じベクトルで進むこと、多くの人が被災地に集まって知恵を絞り出すことが医療再生の第一歩になるはずです。

 これから本番を迎える被災地の医療再生に向け、すべての人に優しい街作りが実現できるよう、青森からも継続してエールを送りたいと考えています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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