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第47回 生活保護見直しの影響 -他制度の利用者にも- (2013年2月21日陸奥新報掲載)

 先月29日に2013年度政府予算案が閣議決定され、生活保護の給付水準の引き下げが盛り込まれました。

 自由民主党・公明党連立政権合意や社会保障審議会生活保護基準部会の検証結果を踏まえ、08年以降の物価下落を勘案して見直すとされ、財務省の発表によれば、13年度だけで生活扶助費(食費・光熱費など)で221億円、医療扶助費(医療サービス)などで450億円削減します。さらに、年末の特別需要への支給(期末一時扶助費)も13年度からの3年で70億円削減する予定です。

 厚生労働省によれば、最大10%の引き下げになる世帯もあるそうです。

 生活保護は国が4分の3、地方自治体が4分の1をそれぞれ負担することになっていますので、国の予算が減ればそれに伴って地方自治体の負担も減ります。つまり、生活保護世帯に渡る生活扶助費は市町村負担分も合わせて295億円(221億円に3分の4を掛けた金額)が減ることになります。

 引き下げ額を08年度の生活扶助8965億円と比較すれば、マイナス3.3%となります。

 

▽消費者物価指数はほぼ横ばい

 流れは、物価下落幅に合わせて引き下げを決めたことになっていますが、ここ10年間の消費者物価指数はほとんど変化していません。



 消費者物価指数は、588種類の指定品目の価格を全国167市町村で調査し集計されます。その時に、支出額の割合も「ウエイト」として計算します。指定品目では、価格が上昇するものも下降するものもありますが、ウエイトも考慮して毎月の消費者物価指数が公表されています。

 「健康で文化的な最低限の生活」と縁遠いと思われるようなノートパソコン、パック旅行、ゴルフのプレー料金、自動車保険料(任意)なども高いウエイトで含まれています。

 10年の消費者物価指数を100として経年的な変化を見ると、最も高かったのは1989年10月で104.5でした。予算額の基準になった08年の消費者物価指数は9月に103.1と上昇しましたが、一時的なもので、ここ10年間はほぼ100で推移し、昨年12月は99.3でした。

 瞬間的に上昇した消費者物価指数を用いて引き下げ額を計算したことは、生活保護の現場に混乱をもたらすことになります。

 生活保護は06年度までに老齢加算が廃止され、我慢しきれなくなった人々が「健康的で文化的な最低限度の生活」を求めて立ち上がり、青森でも「生存権裁判」が続いています。

 

▽他制度への影響も

 今回の生活扶助基準額の引き下げは、生活保護の基準額を目安としている他の制度利用者にも影響すると警鐘が鳴らされています。その範囲について、厚労省は▽住民税非課範囲▽就学援助制度▽保育料▽国民年金保険料▽国民健康保険や後期高齢者医療制度▽高額医療・高額介護合算療養費制度▽介護保険料や介護サービス費▽障害者福祉サービス▽最低賃金―などを挙げています。多くの分野でマイナスの影響が予想されています。

 机上の計算ではなく、寒さに凍える高齢者が「安心してあずましく」暮らせる社会を国全体の目標にすべきです。今の若者も、何十年か先には高齢者になるのですから。

 次回は医療扶助の適正化を目指した、生活保護患者に対する「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」の使用促進について考えます。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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