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第50回 TPPで皆保険が危ない?(上) -米が規制緩和を要求- (2013年5月16日陸奥新報掲載)

 1961年に国民皆保険制度がスタートし50年以上がたちましたが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加交渉では、自動車と並んで「保険」が懸案事項になっています。米国の医療保険会社は規制緩和を強く求めています。日本は米国型の「自己責任」か、半世紀守ってきた「社会保障」かの選択を迫られています。

 3回に分けて民間医療保険の医療費直接支払いと現物給付化、そして混合診療の範囲拡大について考えます。

 

▽公的医療保険と民間の違いは

 国民全員が「公的医療保険」に加入し必要な医療が受けられる国民皆保険制度に対し、生命保険会社、損害保険会社がテレビや新聞などで宣伝している医療保険は「民間医療保険」と呼ばれます。どちらも医療保険ですが仕組みや考え方が全く違うもので、民間医療保険は保険会社が利益を得ることを目的にした「金融商品」です。

 公的医療保険の財源は、国民、企業、雇用主の保険料、国と地方自治体の公費、患者の窓口負担金で、全額医療費(社会保障)に充てられます。

 一方、民間医療保険は契約者の掛け金(保険料)で運営され、給付(保険金)に充てられるだけでなく、宣伝費や人件費といった経費、株主への配当に使われます。

 

▽現物給付とは

 公的医療保険は、政府や市町村、企業などの健康保険組合が保険者となり、国民(被保険者)に医療機関を通じて医療サービスを提供(現物給付)し、医療機関には対価(診療報酬)を支払い、被保険者には窓口で1~3割の負担金を支払うことが義務付けられています。

 これに対し、生命保険と民間医療保険は、契約内容に従って契約者に保険金が支払われ、原則として保険会社の現物給付は禁じられています。

 交通事故などを対象とする損害保険(自由診療)では、保険会社が契約者に代わり、診療報酬を医療機関に直接支払うことができ、事実上は現物給付が認められています。

 最近では医療費連動型医療保険と呼ばれる窓口負担を保険金で穴埋めできる商品が登場しましたが、あくまで保険金は契約者に支払われます。

 

▽直接支払いサービス解禁か

 そこで、国の金融審議会は健康保険の一部負担金と公的医療保険の利かない医療(高度先進医療、差額ベッド代など)を契約者に代わって保険会社が医療機関に直接支払うサービスと現物給付化について医療保険でも検討しています。



 TPP参加後は米国から「民間医療保険の現物給付化」要求が起こることが容易に想像できるので、その準備ともいえます。民間医療保険で直接支払いが可能になれば、形の上では現物給付になるため、現物給付化への道は大きく開かれることになります。

 

▽国保料滞納400万世帯

 直接支払いサービスも現物給付化も、保険料が払える人のための制度です。国民健康保険料を滞納している世帯は全国で400万世帯(全世帯の20%)にのぼるといわれ、民間医療保険への加入すらできません。直接支払い、現物給付が進むと国民皆保険制度からはじき飛ばされてしまい必要な医療が受けられなくなる恐れがあります。

 次回は、民間医療保険会社の現物給付が米国でどのように行われているのか考えます。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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