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第53回 社会保障改革(上) 医療編 -増税で国負担増加? (2013年8月15日陸奥新報掲載)

 政府の社会保障制度改革国民会議は今月6日、安倍晋三首相に最終報告書を提出しました。報告書の「医療・介護分野の改革」について、問題点を2回にわたり解説します。

 医療分野では、70~74歳の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる、国民健康保険(国保)の運営を市町村から都道府県に移す、国保を除く健康保険が後期高齢者医療制度のために負担する支援金を、収入に応じて負担する「総報酬割」を導入する、などの改革案が報告されました。

 

▽増税は赤字穴埋め?

 今回の改革は、消費増税を前提に進められます。国の税収が増えることで、医療や介護のサービスが向上するのでは、と期待する人もいるでしょう。しかし、報告書を読む限り視界不良です。

 報告書では、「年金・医療・介護の財源の4割弱が公費」と強調されています。しかし、社会保障関連の財政は、増え続ける社会保障費に見合った税負担がなく、不足分を国債で補っている状況です。消費税が増税されてもこの構造が解消される訳ではないと述べています。

 増税分が医療と介護のサービスの質に直接反映せず、借金返済に充てられるとすると、「焼け石に水」のようにも感じます。

 過去20年間分の医療費負担を財源別に見ると、国庫の負担率は4分の1程度です。1989年の消費税導入後も、5%に増税された97年以後も、国の負担率は増加していません。



 財務省は、来年度以降の消費増税によって医療費の国庫負担を増やす予定ですが、報告書を読む限り、「国庫負担は増えないかもしれない」という印象が拭えません。額だけでなく負担率が増えるか、注視していく必要があります。

 また、事業主の負担率は下がり続けています。理由として、非正規雇用者が増え国保に加入するようになったことが要因との指摘があります。報告書では「被用者保険の適用拡大が重要である」と、非正規雇用者の健康保険加入が検討課題に挙がっていますが、具体的な提案はありません。

 

▽赤字解消が移行条件

 報告書では、国保の保険者を都道府県に移行する前提条件として、国保財政の赤字解消を求めています。財務省によると、消費税が10%になった場合、地方で増えるのは地方消費税1・2%と地方交付税0・34%の合計1・54%。国税は3・46%増える予定ですが、国保財政の構造問題解決にどうつながるかは未知数です。

 いくつかの赤字の財布(市町村)を大きな財布(都道府県)に入れ替えても赤字は解消しません。日本医師会は公的医療保険制度の全国一本化を提案しています。

 

▽「QOD」とは?

 報告書に「QOD」という聞き慣れない横文字が登場しました。クオリティー・オブ・デスの頭文字で「死の質」と訳されます。報告書では、死の質を高める医療の重要性が語られています。

 経済誌の「死の質・国別ランキング」によると、日本の終末期ケアの質や公的支援の費用は、欧米各国と比べてかなり低いと報告されています。そのため、日本でも安らかな死を迎えるための研究が始まっています。

 財務省は目先の終末期医療費を減らしたいと、手を替え品を替え新しい制度を作ろうとしています。ある政治家の失言「さっさと死ねる社会」は、QODを間違って捉えたものです。尊厳ある死が迎えられる社会にするためには、目先の財政に惑わされることなく、高齢者から支持される「哲学」が求められます。

 次回は介護保険の改革案について解説します。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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