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第54回 社会保障改革(下) 介護編 -地域完結型へ移行か (2013/9/19陸奥新報掲載)

 今回は、8月6日の社会保障制度改革国民会議報告書と8月21日に閣議決定された「プログラム法案」から、介護がどのように変わろうとしているのか、消費税率引き上げによる増収分がどのように活用されるのかについて解説します。

 

▽介護保険制度の見直し

 一定以上の所得を有する人の自己負担を1割から引き上げ、要支援者向けサービスを保険給付から外し、市町村の事業に移行します。これまでの検討部会では一定以上の所得とは年収300万円程度とし、2割へ引き上げることなどが議論されてきました。その他、低所得者に対する施設入所の居住費や食費の助成が行われていますが、基準になっている「所得」だけでなく、貯蓄や土地などの「資産」も勘案する、遺族年金や世帯分離配偶者(夫と妻の住民登録が別)の所得も勘案するなど、低所得の捉え方も見直されます。その上で、低所得の第一号被保険者の介護保険料の負担軽減などが予定されています。

 

 

▽増収の行方は

 報告書では「医療・介護サービスの提供体制改革の推進のために必要な財源は、消費税増収分の活用が検討されるべき」としつつも、地域によって人口動態ひいては医療・介護需要のピークの時期や程度が大きく異なり、医療・介護資源も地域差が大きい実態を浮かび上がらせ、医療と介護の在り方を地域ごとに考えていく「ご当地医療」の必要性を強調しています。

 医療・介護サービスが地域完結型に変わるためには、現在は全国一律となっている診療報酬と介護報酬も地域に合った体系に見直すことも提案されています。そのため、財政支援は介護報酬見直しとは別に「基金方式」を勧めています。

 医療と介護への投入金額はまだ決まっていません。これまでの議論では、在宅介護の充実等に2,500億円、それに伴うマンパワー増強に2,400億円を充てることが提案されています。しかし、同時に介護施設から在宅への移行によって1,800億円の削減を目指しているため、消費税から投入される金額は4900億円ではなく、真水としては3,100億円とされています。

 一方、厚生労働省が8月30日に発表した『「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進』によると、「介護・医療情報の見える化」で2025年までに6,000億円の介護費を削減するとしています。このように、実際より大きく見える「充実案」と同時に、いくつもの削減案も出されているため「真水」として消費税から投入される金額について注目していく必要があります。

 

▽医療と介護の境界は無くなる?

 報告書では、居場所を病院、介護施設、在宅へと移動することを「川上から川下」と表現し、地域ごとの医療・介護・予防・生活支援・住まいの包括的なネットワーク構築(地域包括ケアシステム)が必要」とされています。

 また、医療法人間の合併、医療法人と社会福祉法人、さらには介護事業社が加わった「ホールディングカンパニーの枠組み」も提案され、介護保険が医療と福祉も巻き込んで「市場化」されようとしています。

 理念も経済も包括的なネットワークに生まれ変わろうとしていますが、現行の法律では医療は健康保険法により現物給付、介護は介護保険法により費用給付となっているので、リハビリや訪問介護など医療と介護両方が関わる場合必ずしも合理的とは限らず、現場での混乱が予想されます。

 改革実現のためには、乗り越えるべきいくつものハードルが待っていますが、混乱が最小限になるよう現場から切れ目のない提案をしたいと考えています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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