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第55回 医療費の消費税増税-薬価と機器が値上げ (2013/10/17陸奥新報掲載)

 来年4月からの消費税率8%が正式決定したことで、医療における消費税の具体的な対応案が固まってきました。今回は、医療機関の消費税負担を審議する「中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織」で検討された「高額投資に関する消費税」と「薬価・特定保険医療材料の消費税」について解説します。

 昨年6月の本コーナー(第39回)でも取り上げたように、保険診療は非課税のため、患者が窓口で消費税を支払うことはありません。医療機関の持ち出し(損税)になっている消費税分は、診療報酬で補てんされてきました。

 

▽高額投資対応は実施せず

 高額投資は建物、電子カルテシステム、画像診断システム、医療機器などが対象です。診療側、支払い側とも今回は「診療報酬とは別建ての高額投資対応は実施せず、診療報酬改定により対応する」と意見が一致し、消費税が8%に引き上げられるときに再度検討することになりました。

 改定案として、高額投資の消費税増税分は「基本診療料と調剤基本料への上乗せを中心に対応する」としています。具体的には、病院と医科・歯科診療所の初・再診料に、調剤報酬は調剤基本料に何点か上乗せし、もし余った財源があれば入院料等に上乗せすることになりそうです。

 

▽薬価と材料価格は値上げ

 薬価と特定保険医療材料(人工関節やペースメーカーなどの医療機器)の価格については、現行の市場価格に増税分を上乗せする予定です。

 現在の薬価と特定保険医療材料の価格は2年ごとに見直され、市場価格に調整幅2%を加えて新薬価が決められます。調整幅とは「薬剤流通安定のための最小限必要な調整比率(金額)」で、1992年には15%でしたが年ごとに縮小し2000年に2%と決められました。

 例えば、見直し前の薬価を100円とすると、調整幅は2円となります。医療機関での薬剤購入価格の平均値が税込み80円とすると、消費税が5%で変わらないなら来年は82円(80円+2円)。消費税が8%になると84・3円(税抜きの価格76・2円×1・08+2円)となり、2・3円値上げされることになります。



 この値上げ分は受診した患者本人が負担する他、被保険者、事業主が6割以上負担することになります。

 国民は社会保障のために消費税を負担しますが、消費税の投入先である医療分野でも増税になります。消費税を負担した国民がさらに医療費の消費税も負担するという二重払い案が提案されています。

 

▽消費税金額表示は見送り

 明細書に消費税の正確な金額を表示すると患者に分かりにくいため、金額は明示せずに「消費税対応分が薬価と特定保険医療材料価格に上乗せされている旨を簡略な方法で表示する」との案が浮上しています。

 患者に分かりにくいと不評ですが、医療機関と患者の信頼醸成につながるとして診療明細書発行は医療機関に義務化されています。消費税について「分かりにくいので金額を明示しない」というのは何とも納得のいかない理由です。

 

▽国民的議論が必要

 県保険医協会は診療報酬を課税対象とした上で、消費税率を0%にする「ゼロ税率」を提案しています。診療報酬にゼロ税率が適応されれば、今まで診療報酬で手当てされた分の医療費引き下げが可能で、保険料の負担も減らせます。

 安倍首相が消費増税と一緒に法人税減税について言及したことから「じぇじぇじぇ」という声が上がっています。医療における消費税も「あれれ~」にならないように、今から国民的議論をして丁寧に対応する必要があります。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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