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第57回 有床診療所(下) 地域医療の拠点期待 (2013/12/19日陸奥新報掲載)

 前回に引き続き有床診療所について解説します。高齢化が進む中で有床診療所が地域医療の拠点として期待され、来年の診療報酬改定でも報酬増額が検討されています。

 

▽火災遠因に低い診療報酬

 今年10月、福岡市の有床診療所で高齢者10人が死亡する火災が発生したことを受け、日本医師会の有床診療所に関する検討委員会は「有床診療所関係者は、亡くなられた方々の尊い犠牲を無駄にしないためにも、様々な問題を早急に解決し、より一層地域医療の充実に尽力していく覚悟である」としています。

 

 そして火災発生の遠因の一つに、長年にわたる診療報酬面での評価の低さを挙げ、診療報酬を引き上げるとともに国の補正予算で火災へ対応するよう要望しています。

 

 有床診療所の機能として、急性期の病気を治療する大病院退院後の受け入れ、在宅・介護施設への受け渡し、在宅患者の緊急時対応、さらに緩和ケアや終末期医療を担う機能などに期待が寄せられています。

 

 地域によっては病院などで産婦人科を休止するところもあり、産婦人科有床診療所が担う「お産ができるクリニック」としての役割が高くなっています。また、眼科や整形外科では手術を行う有床診療所もあり、専門医療を担うことで勤務医の負担軽減と医師不足に寄与している地域もあります。

 

 社会保障審議会医療部会は今月6日、来年度の診療報酬改定の基本方針を示しました。医療機関の機能の分化・強化と連携、在宅医療の充実などを掲げ、有床診療所の新しい機能を評価し、診療報酬アップが検討される予定です。

 

▽本県では黄色信号

 有床診療所は在宅医療の担い手です。過去の改定で在宅医療の診療報酬が引き上げられ、「在宅療養支援診療所」が全国的に増えています。在宅療養診療所とは、一般の診療所と比べて診療報酬が高く設定されていて、24時間体制の往診や急変時の入院先の確保など、基準を満たす必要があります。主に有床診療所が手を挙げていますが、本県では必ずしも増えていません。理由は、有床診療所の数自体が減少、医師の就労時間も長時間となる、算定要件が厳しいことなどです。

 

 厚生労働省が公表した在宅療養支援診療所の都道府県別分布を見ると、65歳以上の高齢者人口1万人当たりの診療所数は全国平均で4.6件ですが、本県は2.5件と低いことが分かります。人口1万人当たりの医師数と同じく西高東低になっています。医師不足の本県では、有床診療所が新たな機能を担うことは困難と言えます。

 

 

▽医療・介護難民が増加

 高齢社会が進み、団塊世代が70~80歳を迎える2025年には、医療も介護も多くの「量」が必要になります。現行の制度でも支えきれずに落ちこぼれる人がたくさんいる中、高齢で急に具合が悪くなった時、介護保険制度は必ずしも受け皿にはなっていません。

 

 有床診療所はそれを補うように、病院・在宅医療そして介護からもサポートしてもらえない人の受け皿となってきました。在宅医療の充実が進まず有床診療所がなくなれば、病院勤務医の負担が増え、医療・介護難民が大量に発生し、孤立死が増えるのではないかと危惧されています。

 

 日本医師会では、有床診療所の病床をフル活用することで高齢社会でのニーズに対応すべきだと提案しています。有床診療所にこれらの役割を期待し、火災に対しても安全な施設にするためには、診療報酬でわずかな点数を付けて現場に任せるだけでなく、社会全体として大胆に対応する必要があります。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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