医療・福祉制度ナビ -知っておきたい最新情報-

 

第58回 東北に医学部新設 -復興へ「名士」育成を (2014年/1月/16日陸奥新報掲載)

 文部科学省は昨年11月29日に「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針」の中で、早ければ2015年4月に開校予定であることを公表しました。今回は医学部新設が東北地方、特に被災地の医師不足解消につながるかについて考えます。

 

▽渦巻く賛否両論

 基本方針によれば「震災からの復興、今後の超高齢化と東北地方における医師不足、原子力事故からの再生といった要請」に応えつつ、「医師需給等も勘案し医学部新設を認可する」としています。

 

 いち早く宮城県が歓迎を表明し、東北6県の市町村長もアンケート調査で8割が賛成と答えています。

 

 一方、全国医学部長病院長会議は「地域の医療崩壊を招くだけでなく、医療の質の低下を来し、将来的に医師過剰になる」として反対を表明。宮城県医師会と日本医師会も「付属病院に勤務する医師300人が新たに必要となるが、東北以外からこれだけの医師を集めるのは困難」だとして反対しています。

 

 全国的に都市に医師が集中する医師偏在が問題になっていますが、東北地方も同じです。その原因として「医学部卒業生が地元に残らず、研修医が都市に集中しているため」との指摘があります。

 

▽宮城県の一人勝ち

 今年4月から研修医になるのは08年に医学部に入学した人です。14年の研修医の動向を文科省と「医師臨床研修マッチング協議会」のデータを基にまとめてみました=図=。本県は入学定員が110人でしたが、今年本県で研修する研修医は71人(定着率65%)でした。本県では、研修医が県内に残るようにと06年から推薦入学制度に「県内枠」を設け、08年は30人が入学しています。

 

 

 秋田県58%、山形県64%、岩手県76%と低迷している中で宮城県だけが119%と研修医が集中していることが分かります。同県の一人勝ちで、東北地方で見ても研修医の偏りがさらに拡大しています。

 

 医学部新設を目指す仙台厚生病院理事長の目黒泰一郎氏は、自治医科大(栃木県)と同じ理念に基づき、毎年30人の研修医を「3人一組」で東北各地の地域病院に派遣するシステムを提唱しています。

 

 しかし、その程度の仕組みでは医師偏在に歯止めは掛かりません。解消するには、医師不足地域のマッチング者数が入学定員を上回ることが必要で、マイナスでは医師の偏在が加速していることになるからです。

 

 本県は県内枠で研修医を引き止めようとしていますが、流出に歯止めは掛かっていません。もし仙台市に医学部が新設されても、本県の研修医数がプラスに転じるとは考えられません。

 

▽過疎地の病院経営モデルを

 被災地の医師不足解消と復興に主眼を置くなら、岩手県の沿岸部、それも大船渡市や陸前高田市がある気仙医療圏に医学部を新設してはどうでしょう。学園都市をつくることで医師確保はもちろん、被災地の高齢化を食い止め地域経済の再生も可能です。

 

 現在の医学部設置基準や前例から考えれば、「国立気仙医科大学」は実現不可能かもしれません。過疎地に付属病院を作っても経営が難しく、民間が大学を新設することは困難です。逆に、過疎地の病院経営が成り立つモデルを作り出すことは国に課せられた責務であり、そのための規制撤廃ができるのは国だけです。

 

 新設大学には医師、特に「総合医」を育てるだけでなく、地域活性化に取り組む「名士」を送り出すことを期待したいと思います。

 

 今必要とされているのは大きな夢を持ち、知恵を絞り出しながら困難なハードルを乗り越える挑戦です。文科省は国の責任を明確にした上で、時間がかかっても国立気仙医科大学について検討し、結論を出してほしいと考えています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

※この記事は、当該ページに限って陸奥新報社が記事利用を許諾したものです。転載ならびにこのページへのリンクは固くお断りします。

 

問い合わせ
〒030-0813 青森市松原1丁目2-12 青森県保険医会館内
TEL.:017-722-5483 FAX:017-774-1326
MAIL:a-hoikyo@ahk.gr.jp
事務局までの交通アクセス(地図)



TOP 青森県保険医協会 企画 資料 リンク 出版物 会員ページ