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第59回 介護保険が変わる -サービスの質に不安- (2014年/2月/20日陸奥新報掲載)

 政府は12日、医療と介護制度を見直す「地域医療・介護総合確保推進法案」を閣議決定しました。介護保険は2015年4月から大きく変わる予定で準備が進んでいますが、改正でサービスが受けにくくなるのではと不安の声も上がっています。残された1年間で不安を期待に変えるためにどうすれば良いのかを考えます。

 

 現在は要支援者を対象にした訪問・通所介護は、全国一律のサービス内容、単価となっています。しかし、地域の実情に応じた取組みを可能とするため、NPO、民間企業、ボランティアなどを活用できるように見直される予定です。

 

 訪問介護では、民間事業者などによる掃除、洗濯、住民ボランティアによるゴミ出し、通所介護では短時間のミニデイサービスなどが可能になります。

 

 

▽市町村財政がカギ

 訪問型・通所型サービスの単価については、市町村に対し「値上げをせずに現在の単価以下にすること、事業費の総額が上限を超えないように限度額を設ける」など、財政の圧縮を目指しています。具体的には年間6%の伸びを4%程度まで圧縮する予定です。

 

 要支援者に対するサービスが市町村に移っても、介護保険制度内でのサービス提供に変わりなく、財源構成も変わりません。また、質を低下させることなく多様なサービスを効果的、効率的に提供することになっていますが、財政が厳しい市町村が今までの量と質を維持できるか不安が残ります。

 

 介護の総量は、高齢者の増加によって年々増えていますが、14年の診療報酬改定によって、医療保険から介護保険に移るサービスが増えます。中でも、急性期を過ぎたリハビリは、16年に医療から介護保険に移行します。さらに、障害者総合支援法から介護保険に移行する圧力が強まり、介護保険サービス量は急激に増えると予想されます。

 

▽負担増で利用抑制?

 低所得者の保険料軽減と同時に、一定以上の所得のある人の利用時負担を1割から2割に引き上げ、食費・部屋代の補助が縮小されます。

 

 2割になるのは1人暮らしの人で年金収入が280万円以上の人です。補助の縮小は、預貯金が1000万円以上ある人が対象になります。

 

 ただ、負担増による財政効果は限定的で、最大の目的は利用を制限することです。医療では負担額増で受診が抑制されることが証明されています。

 

 2割負担の根拠になった資料の出典が明記されていませんが、総務省統計局による全国消費実態調査(09年)と思われます。無職高齢者世帯の収支を計算し、年間60~65万円の余裕があるとしていますが、この調査は秋に行われ冬期間の暖房費は含まれていません。さらに総務省統計局の家計調査(12年)によれば、「個人が自由に使える収入が減少しているにもかかわらず消費支出が増加し、家計の赤字は年々増加している」という逆の調査結果があります。

 

▽期待できる改正を

 低所得者の保険料軽減や地域の実情に応じた介護メニュー、高齢者も参加したボランティアは、地域の力が発揮できると大いに期待されます。

 

 一方で、市町村が財源を理由にした利用抑制に向かわないための仕組みづくりが必要です。利用者の応能負担は利用抑制につながるので、収入や預貯金を問題にするなら保険料の上限額を見直す応能負担の拡大が有効です。

 

 さらに、介護保険が社会保障のセーフティーネットの働きをするためには、今は議論にもなっていない国の責務、企業の責務を見直す必要があると考えます。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第3木曜日掲載=

 

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