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第62回 障がい者の福祉制度(中) ~難病対策の見直し 所得に応じた負担へ
(2014年5月26日陸奥新報掲載)

 今回は、5月23日に成立した「難病の患者に対する医療等に関する法律案」(以下難病新法)の中でも、人工呼吸器使用者の自己負担について考えます。

 

■ゼロから一律1000円

 難病新法では医療費助成の仕組みが見直されます。新制度では患者負担の上限を障がい者の自立支援医療を参考に、所得に応じて設定します。

 

 

 年収80万円以下で月2500円、80~160万円で5000円になる予定です。さらに、人工呼吸器等の生命維持装置を常時装着する人は、負担上限が一律1000円になります。

 

 市町村によって異なりますが、現行の人工呼吸器使用者の負担額は多くはゼロです。難病新法が成立すれば、気管切開の人は月1000円、鼻マスクの人は所得に応じて2500円から3万円の負担増になります。

 

 4月、難病新法を審議している衆議院厚生労働委員会で赤石清美厚生労働大臣政務官は、負担限度額が月1000円となる「人工呼吸器等装着者」の対象は、「神経難病で気管切開をおこなって恒久的に人工呼吸器を装着している人」と例を挙げ、「鼻マスクによる人工呼吸は人工呼吸器装着者に含めない」と答弁しました。

 

 この答弁に、患者や家族らから「気管切開と鼻マスクの区別は無意味」「今まで通り自己負担をゼロにしてほしい」などと反対の声が上がりました。

 

■国会で患者ら訴え

 県保険医協会は5月16日、衆議院第一議員会館で、人工呼吸器使用者の声を国会に届けようと「緊急集会 息をするだけでお金を取らないでください」(日本筋ジストロフィー協会など賛同)を主催しました。

 

 会場には患者2人が駆け付け、名古屋と札幌からはインターネット電話でも参加しました。国会議員や関係者らも含めた約40人で、鼻マスク、気管切開での人工呼吸に理解を求めると共に、障がいがあっても安心して暮らせる社会になってほしいと訴えました。

 

 最後に、「気管切開と鼻マスクなどで区別しないで、人工呼吸器使用者の自己負担はゼロにする」と集会アピールを採択しました。

 

 「人工呼吸器使用者でも高収入なら1000円くらいは負担すべきだ」と「応益負担」を求める意見もあります。

 

 高齢者医療費の自己負担がゼロの時代もありましたが、「コンビニ受診を制限し、無駄な医療費を削る」ために何度も引き上げられてきました。

 

 神経筋疾患などで、人工呼吸が必要な人の受診を制限することは許されませんし、「無駄な医療費」は論外です。

 

 そもそも、医療費負担は「応益負担」ではなく、「保険料の応能負担」が原則です。しかし保険料の応能負担は実現できていません。年収2000万円超の民間サラリーマンの年間保険料は約121万円。年収がいくら増えても保険料は据え置かれる不公平な仕組みになっています。

 

 みんなの党によれば、高所得者数は健保組合加入者の0・4%。限度額をなくした場合、健保組合だけでも保険料収入は年間約2200億円増えるそうです。

 

 一方、5月20日の参議院厚生労働委員会で厚労省は、1000円負担をゼロにするために必要な金額は年間1億2000万円と答えています。

 

 今年4月から引き上げられた消費税分を、国は全額社会保障に使うと約束しました。人工呼吸器使用者も消費税を納めています。年間1億2000万円の支出はできないのでしょうか? できないとしたら、やはりだまされた気分です。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第4月曜日掲載=

 

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