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第64回 安倍政権の医療改革(上)~大学病院がHCに? 医師不足解消に疑問
(2014年7月28日陸奥新報掲載)

 安部首相は1月のダボス会議で、「日本にも米国のようなHC(ホールディングカンパニー=持ち株会社)型の大規模医療法人ができてしかるべき」と述べ、持ち株会社制度などを通じて、医療分野の発展を促す考えを示しました。

 

 6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」にも盛り込まれた政府の健康産業の活性化策の中から、今月は「HC」について解説します。

 

■HCとは

 HCは、複数の企業をグループとして統制するために設立された核となる親会社です。食品系の会社で聞く「○○ホールディングス」は「営利HC」です。利益を求めない「非営利HC」には、JA長野厚生連(長野県)、聖隷福祉事業団(静岡県)など、医療、福祉系の法人があります。

 

 現在、大学病院がHCになるための準備が急ピッチで進んでいます。2014年度中に仕組みを検討し、15年度中には全ての準備が整う予定です。大学から大学附属病院を別法人化し、「非営利HC型法人(仮称)」にするものです。

 岡山大学は3月末、「岡山大学メディカルセンター構想」を提案しました=図参照=。

 

 岡山大学附属病院を中心として国立病院機構岡山医療センター、岡山市民病院、岡山労災病院、岡山日赤病院、岡山済生会病院を包括した「岡山大学メディカルセンター」を作り、HCとなる内容です。センターが医療従事者の人事権、人事ローテーションを握ることで、地域医療に必要な医師を確保でき、医療過疎が解決できると書かれています。

 

 弘前市で置き換えると弘前大学附属病院、国立病院機構弘前病院、弘前市立病院など、地域の基幹病院が統合され、「弘前大学メディカルセンター」ができるイメージです。

 

■介護との一体化も

 日本再興戦略で目指すのは、医療機関だけでなく社会福祉法人等も統合し、医療・介護等を一体的に提供し、地域包括ケアを担う医療・介護事業者の創設です。

 

 さらに医療法人が持つ遊休スペースを、介護施設や高齢者向け住宅に貸与できることも盛り込まれています。

 

 非営利HCになれば、医師不足が解消し医療の質が向上するでしょうか? 答えは「ノー」と言わざるを得ません。全国展開するHCが本県に来なければ、医師不足は解決できないようです。

 

 非営利型HCの大規模化には相当の時間を要します。さらに、強い法人が弱い法人を買い、強い法人が新しいものを作ることになります。金融機関がバックに入ってきた時に法人の非営利性、公益性どう担保するのかも、懸念されています。

 

■医療格差拡大か

 地域で独占的なメディカルケアセンターができ、国保と医療保険の都道府県化が完成すれば、保険者機能が強化され、診療報酬単価を都道府県で決めることが可能です。例えば診療報酬の1点単価を10円から8円にすると、医療費の2割引き下げになり、医療費抑制の切り札になってしまいます。

 

 日本は全国どこでも同じ質の医療や介護が受けられることを目指してきましたが、国は医療・介護サービス供給の責任を都道府県・市町村に丸投げし、国の責務を減らそうとしています。自治体によって診療報酬やサービスが異なるだけでなく、格差が拡大し固定化する恐れもあります。

 

 福井地裁は5月下旬、「経済活動の自由は人格権よりも劣位に置かれるべき」と、大飯原発の運転差し止めを命じる判決を下しました。HCでも人格権が優先される事が大切です。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第4月曜日掲載=

 

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