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第65回 安倍政権の医療改革(下)~患者申出療養 -混合診療が解禁に?-
(2014年8月25日陸奥新報掲載)

 今月は安倍政権が提案した医療改革の一つ「患者申出療養(仮称)」について解説します。

 

■希望で保険外治療

 健康保険制度では保険診療と自由診療を同時にする混合診療は禁止されています。例外的に先進医療などの「評価療養」と差額ベッドなどの「選定療養」が認められていますが全額自己負担です。この混合診療の保険外併用制度の中に、患者の希望によって保険診療と自由診療が行える患者申出療養制度を新設しようと、2016年度導入へ準備が進んでいます。

 

 目的は「困難な病気と闘う患者の迅速な治療のため」(政府)です。「患者が国内未承認の医薬品等の保険外の治療を希望する場合」と「等」が含まれているので、手術やその他の器具を用いた治療も含まれる可能性もあります。以下の条件が挙げられています。

 

 ・患者からの申し出を 起点とする

 ・専門家が合議し原則 6週間で判断する

 ・国は安全性、有効性 が確認されたものは実 施を承認する

 ・臨床研究中核病院が 診療を提供する

 ・連携した身近な医療 機関も協力医療機関と して診療を提供する

 

■「第3の道」か

 評価療養は、新しい治療法を保険適用するか評価するために実施されています。ただし患者が限定され、実施計画の諸条件を満たすことが必要です。

 

 患者申出療養でも、評価療養と同じく諸条件を満たす必要がありますが、臨床研究中核病院で安全性や有効性を確認した上で、国が審査し迅速に先進医療などを受けられるようにする、と柔軟性をもたせる内容です。

 

 しかし、甘利経済再生担当相が「歴史的改革」と強調していることから、評価療養の延長ではなく、混合診療につながる「第3の道」という見方も出ています。評価期間の短縮を目指していますが、保険への導入時期の目標は設定していません。適用を先延ばしすることは混合診療の市場拡大を意味します。

 

■安全と有効性に疑問

 患者からの申し出を起点とする制度ですが、患者団体のヒアリングは行われませんでした。

 

 現在、先進医療の実施判断は、専門家会議が6カ月かけて有効性と安全性を判断し、抗がん剤の迅速評価でも3カ月を要していることから、6週間では判断が甘くなるのではないかと不安の声が上がっています。

 

 答弁書には期間短縮は可能とあります。しかし、降圧剤や認知症の薬に関する研究不正で厚労省と中核病院に対する信頼が揺らいでいる中、不安は増大しています。

 

 発売から長期間たって重篤な副作用が発現する薬剤もあります。患者申出療養で薬害等が発生した時、どう扱うかも課題です。また、患者の自己責任で医療事故を補償することにでもなれば、民間医療保険の市場に頼ることになります。

 

 さらに経済を優先させ過ぎて、安全を犠牲にしながら未確立な医療を蔓延(まんえん)させないようにする必要があります。

 

■お金がないと排除?

 患者申出療養制度の場合、保険診療分は1~3割の自己負担となりますが、自由診療分は全額自己負担になります=図参考=。

 

 

 生活保護受給者は現行制度で高度・先進医療を受けられず、患者申出療養も受けることができません。政府は、先進医療の保険適用に関するデータ収集が目的で、医療扶助の適用拡大は難しいと理由を述べています。

 

 お金のあるなしで、受けられる医療に違いが出ることは不公平です。患者に必要な医療かどうかで判断されるべきです。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第4月曜日掲載=

 

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