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第66回 ロビンフット税と消費税 ~議論呼ぶ金融取引税~(2014年9月22日陸奥新報掲載)

 2014年7月18日、財政破綻から約1年がたった米デトロイト市で、看護師労働組合などが主催し「ウォール街に課税せよ」と訴えたデモがありました。水道料金滞納者の給水中断を決めたデトロイト市で、断水された市民がすでに数千人にのぼっていたからです。デモの参加者は、支払いを猶予し、金融取引に課税する「ロビンフッド税」を要求しています。

 

ロビンフッド税

 ロビン・フッドは貧者の味方となり、暴政にあらがった英国の伝説上の人物です。格差拡大の原因になっている国境を越えたマネーゲームに課税し、貧困を救済しようと提案されている、英雄の名前をとった税制です。

 

 その元は、米経済学者ジェームズ・トービンが1970年代に提案した「トービン税」です。外国為替取引などに課税し、金融市場の安定化を目指すもので、通貨取引税、金融取引税、国際連帯税とも呼ばれています。

 

 経済への影響が大きく実現の可能性に疑問があると批判され、実施されませんでしたが、途上国支援や地球環境問題の解決策として90年代から注目され始めました。

 

導入へEU取り決め

 日本では53年から有価証券取引税、90年からは取引所税が実施されていました。90年には合わせて約8000億円の税収がありましたが、99年3月末でどちらも廃止されました=図参考=。

 

 

 2008年、超党派の国会議員が国際連帯税の創設を求め、議員連盟を設立。民主党政権の下の政府税制調査会では「総論賛成という方向性は一致しており、今後議論を深めていきたい」と取りまとめられました。

 

 12年8月に成立した消費税法等改正法では、国際連帯税について検討することが定められています。しかし、政権交代後の13年度税制改正大綱では、国際連帯税の項目は設けられず言及もされていません。

 

 世界的に金融取引税は、リーマンショック後に注目され、EUはG20を通じたグローバル・レベルの導入を目指しています。14年5月の欧州財務相会合で、10カ国が金融取引税の導入に向けて取り決めをしました。

 

経済専門家も注目

 金融活動は実体経済を支える重要な役割を持っていますが、ある時期から金融ビジネスがマネーゲームに変貌しました。世界の実体経済が72兆㌦なのに対し、金融市場はその4倍超と推測され、ギャンブル化しています。

 

 経済専門家の寺島実郎氏は「週刊エコノミスト」内で、「公正な分配」という問題意識を取り戻す必要性や、マネーゲームを抑えるために国際連帯税を課し、環境問題など世界が抱える共通課題の対策に充てることなどを主張しています。

 

消費税引き上げの前に

 社会保障の財源として消費税が8%に引き上げられ、来年は10%に引き上げる予定です。

 

 一方で、消費増税とは関係がないと言いながら法人税減税が予定され、その穴埋めにパチンコ税なども検討されています。庶民の税金を増やす前に、専門テクを駆使して税金を払わず、巨大な利益が集中しているグローバル企業に負担させる必要があります。またタックスヘイブン(租税回避地)などの弊害を放置すれば、租税負担の不公平は強まります。正義・公平・民主主義を求め続けることが大切です。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第4月曜日掲載=

 

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