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第67回 労災と交通事故医療(上)- 労災医療 ~早い職場復帰が目的~
(2014年10月27日陸奥新報掲載)

 保険診療と自由診療の間に、健康保険法とは別の法律によって提供される医療が二つあります。仕事環境、または業務自体が原因でけがをしたり病気になったりして医療を受ける労災医療と交通事故によって医療を受ける交通事故医療です。今月は労災医療を解説します。

 

■保険料は事業主負担

 労災医療は労働者災害補償保険法によって提供されています。災害補償責任が労働基準法によって事業主になっているので、労災保険の財源は事業主の保険料によって賄われ、労働者の負担はありません。従って、国民が保険料を負担する健康保険制度とは性格が異なっています。

 

 労災医療は、けがや病気をできるだけ早く「治癒」へ導き、早い職場復帰が目的です。そのため、単に健康の回復を図るだけでは不十分で、稼得能力の回復に向けて積極的な給付を行うために療養の範囲が広くなっています。

 

 労働災害は「手足のけがが多い」、「一般的なけがに比べて複雑」、「患部の汚染度が広範囲で深層にわたる」、「処置や回復に時間がかかる」など特殊性が高いことが多く、算定基準も健康保険とは異なっています。診療単価は1点12円(公的医療機関は11円50銭)で、労災医療は消費税は非課税ですが事業税が課税されます=図参照=。

 

 

■治癒(症状固定)とは?

 労災保険における治癒とは症状固定のことです。症状固定とは、症状が安定し、医学上認められた医療行為を行っても、医療効果が期待できなくなることをいいます。

 

 例えば、「痛みが残っていても、傷口がふさがったとき」、「腰部捻挫では腰痛が残っていても、治療の効果が期待できないとき」に治癒と判断されます。

 

 治癒後に障害が残った場合は「障害等級」に基づいて障害補償が支払われます。障害によっては、治癒後も社会復帰促進事業としてリハビリなどのアフターケアが受けられます。

 

 治癒の時期は、診療担当者の臨床所見を参考にしながら最終的には労働基準監督署長が認定します。

 

■労災隠しは犯罪

 健康保険法の対象は業務災害以外の疾病となっているので、仕事や通勤によるけがを健康保険で治療することはできません。労働者が死亡、休業したとき、労働基準法、労働安全衛生法によって事業者に報告が義務付けられ、「労災隠し」には厳正な措置が取られます。

 

■メリットに合わせ選択を

 通勤中の交通事故で負傷した場合には、労災医療を選択することは可能ですが、労働者が有利になるように原則的に自賠責保険が優先されます。自賠責保険を使えば、労働者にとっても、事業主にとっても有利、労災保険の支出も減らすことができます。

 

 平均賃金の60%の金額が休業4日目から支払われる通勤災害の休業給付と比べ、自賠責保険は負傷当日から平均賃金の100%が支払われ、さらに慰謝料も追加で支払われるためです。

 

 通勤災害は自賠責保険に請求する場合でも健康保険が使えないので、注意が必要です。

 

 労災を選択するか自賠責を選択するのかは、けがをした人が決めることができます。

 

 損害保険会社や共済によっては通勤災害でも労災保険を優先して使うようにアドバイスする場合もあるようですが、それぞれの制度のメリット、デメリットをよく知った上で選択する必要があります。厚生労働省労働基準局労災補償部(Tel:0570-006031)では労災に関する相談を受け付けています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第4月曜日掲載=

 

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