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第68回 労災と交通事故医療(下)-交通事故医療 ~過失負担に矛盾点も~
(2014年11月20日陸奥新報掲載)

 前回に引き続き、公的医療保険の対象外となる医療の一つ、交通事故医療について解説します。

 

 ■全運転者加入の自賠責

 労災医療と同じく、交通事故医療は、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)から医療費が支払われます。自賠責保険は、自動車損害賠償保障法によって自動車を運転する全ての人に加入が義務付けられ、その保険料が財源です。

 

 医療費の単価は、それぞれの医療機関との契約によって決まりますが、多くは労災診療と同じ点数「自賠責診療費算定基準」(いわゆる日医基準)が採用されています。

 

 自賠責保険の他に、運転者が独自に加入する任意保険や被害者の過失も補償する人身傷害保険があります。

 

 交通事故医療は全ての国民が保険料を負担する健康保険制度とは性格が異なり、健康保険を使わずに自賠責保険を使うのが原則です。ただし、被害者の自己負担が大きい場合などは例外的に健康保険(健保)を使うこともできますが、複雑な手続きが必要になります。

 

 患者の健康保険番号は一つに決められているため、事故と、高血圧などの他の病気を別々に請求できません。そのため、1枚の明細書で請求した上で事故とそれ以外の病気を分け、保険者は各方面と過失割合について協議し、結果が出てから求償を行うなど、医療費請求事務、求償事務が煩雑(はんざつ)になります。

 

 健保を使わない時の医療費支払い(任意一括)は、被害者に過失があっても加害者の保険会社が医療機関に全額を支払い、保険者の負担はゼロです。任意保険会社は後で自賠責保険に請求し、立て替えた分を回収します。

 

 一方、健保を使う場合は、第三者の行為による負傷を証明する「第三者行為の届け」や「受診毎に窓口負担」などが、被害者に義務付けられています。

 

 保険者は、被害者(患者)に代わって加害者へ請求(求償)しますが、加害者の加入している損害保険会社は患者の過失相当分は支払いません(過失相殺)。そのため、健保使用では、保険者が被害者の過失分を負担することになります=図参考=。

 

 

 ■回収できない未払い金

 健保使用の場合、国保などの保険者が求償できない部分が生じます。過失割合について保険者から異議を唱えることは困難で、さらに求償しても満額支払われない未払いが多くなっています。治療費の金額を集計することは作業自体が大変で、未払いの回収は困難を極めます。県国民健康保険団体連合会によると、本県の国保の未払い金額は算出していないそうです。

 

 加害者が任意保険に加入せず、自賠責保険の限度額を超えて求償できない場合は仕方がないとしても、任意保険や人身傷害保険から被害者に慰謝料が支払われているにもかかわらず、被害者の過失分を保険者が支払っている現状は制度の矛盾といえます。

 

 ■財務省が運用益未払い

 旧大蔵省が約20年前、旧運輸省の特別会計に計上されていた自賠責保険の運用益から、約1兆1000億円を一般会計に繰り入れたにもかかわらず、今も利息を含めた約6000億円を繰り戻していない異常事態が続いています。自賠責保険についてはモラルハザード(倫理観の欠如)にならないように国民がしっかり監視する必要があります。

 

 県国民健康保険団体連合会(http://www.aomoriken-kokuhoren.or.jp)では、第三者行為損害賠償求償事務の委託・相談を随時受け付けています。

 

(青森市・大竹整形外科院長、県保険医協会会長、県社会保障推進協議会会長)
=第4月曜日掲載=

 

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