「日数打ち切りは、命・生活の打ち切り」吹雪の下北より
青森県下北地域のリハビリテーション

―日数制限後−むつ市現地訪問―

青森県保険医協会
理事 大竹 進

 

 本年4月、公的医療保険におけるリハビリテーションに「日数制限」が設けられた。すでに医療リハビリを実施するにあたっては、1日の上限が設けられていたが、この度の改定でリハビリの体系が4区分に再編され、さらに区分毎に最長で180日という前代未聞の「日数制限」が加えられた。

 本会は、この「日数制限」によりこれまでリハビリテーションを受けてきた患者さんや、地域のリハビリ現場にどのような影響が生じているのか明らかにするため、本会が9月に行った「リハビリ日数制限影響調査」に協力頂いた医療機関の中で特に影響が大きいと思われる青森県下北半島にあるむつ市の2病院を訪問した。本会から私(報告者)と広野晃久事務局次長が訪ねた。

 

 2006126日、午前の診療を終え途中本会広野事務局次長と合流し、車でむつ市へと向かった。

 訪問した下北地域は、むつ市を中心に周辺6町村を医療圏域としている。対象人口は10万人。その中でリハビリテーションを担当しているのが今回訪問した「むつ総合病院」と「むつリハビリテーション病院」である。

「むつ総合病院」は主に急性期リハビリを担当、「むつリハビリテーション病院」は、回復期リハビリを担当している。

 各病院の療法士の数は、むつ病院がPT9名、OT5名、ST2名、むつリハビリテーション病院はPT6名、OT1名、ST1名となっている。また、今回訪問できなかった同圏域にある大間病院はOT1名となっている。医師不足、看護師不足に加えてこの地域は療法士も極端に不足しているのが現状である。その他の診療所には療法士はいない。

 他の地域との連携も考えられるが、青森市からは車で2時間、100kmの距離にあり連携体制が比較的整っている市部から極端に離れている。医療・介護とも量的確保や連携が難しく、地域完結型の医療が求められている地域である。

 訪問先のリハビリテーション科技師長は、「この地域は交通の便も悪く、厳冬期は吹雪などでJRも止まることがある。通院は主にバスを利用しているが、下北半島西端の佐井村からはバスで1時間30分以上かかり、自宅からバス停までのタクシー代を含めると1回の通院で1万円以上かけて通院しなければならない患者さんもいる」という。

 医療リハビリテーションについて同技師長は「日数制限となる9月頃までは、患者本人に伝えても家族が納得せず、直接担当科に苦情があった。中止を余儀なくされた患者さんが今何をしているか心配」と話している。

 介護リハビリ関連のサービスについては、デイケア、通所サービス、訪問リハビリなど、同様にスタッフ不足によりほとんど稼動していないのが現状である。訪問リハビリは、風間浦村で3例、週1回行なわれているが、移動時間を考えると3例でも勤務時間内に帰院できない時がある。冬季間は月1回に減る予定。PT,OT,STの募集を出しているが見つからない。医療と同様に介護リハビリも人手不足となっている。 

 厚労省は、医療リハビリについて「医学的に継続が必要なものは制限から除外される」としているが、「除外される疾患」が限られているため該当しない疾患はそのまま制限となる。また、日数制限後「患者の希望があれば自費で可」という見解を示しているが、自費徴収について訪問先の技師長は「度重なる自己負担増の影響と、200万円から250万円が年間平均収入という地域の現状から、さらに自費を取って医療を受けさせることは、自治体として想定していない」という。

 さらに同省は、「医療保険」のリハビリが終了した後は「介護保険」のリハビリで続けられるとしている。介護保険による「通所リハビリ」の現状は、スタッフ不足などから集団で行うレクレーション的なものが多い。医療リハビリのように専門の療法士が個別・集中的に行っているものとは全く別物である。「訪問リハビリテーション」も同様に療法士不足から提供できるサービスは極端に少ない。在宅でのリハビリは看護師が訪問して行うのが精一杯である。 

 また、同省は介護保険に該当しない年齢の患者さんは「障害児()リハビリテーション」で対応出来るとしているが、医療保険で障害児()リハビリテーションを提供できる施設は県内で5件のみでこの地域にはない。そのため通院するには、片道23時間かかる青森市か八戸市に出向かなければならない。

 本会は、アンケートや集会で集めたリハビリの実態と実際に日数制限を宣告された青森市の患者さん本人を伴い、1026日午前、保団連や他団体と共に厚労省に出向き「日数制限撤廃」を直接訴えている。また同日午後、衆議院会館に於いて保団連と診療報酬を考える会(多田富雄会長)がリハビリの日数制限を直ちに撤廃すること」を目的に全国集会を開催し、患者団体や各党国会議員を含め260名余りが参加した。

 しかし厚労省は、これらの事実を無視するかのように、111日の「定例事務次官会見」や朝日新聞「私の視点」欄での厚労省保険局医療課長発言など「火消し」に賢明となっている。

 同省は、今年中に状況を把握し来年2月に結果を発表するとしているが、現在行っているリハビリテーション実態調査には、患者さんの動向調査が盛り込まれていない。「日数制限を宣告」された患者さんがその後どのような生活を強いられているのか実態を把握することが重要だ。調査期間中もまた一人と新たに「日数制限」となった患者さんが介護サービスや在宅に追いやられている。本県はこれから厳冬期を迎える。医療リハビリを受けられなくなった患者さんの生活が心配される。

 下北半島むつ市が特異な例ではなく、この事実が全国の一般的現象である。

 最近の紙面では、リハビリで何とか社会復帰を目指していた患者さんが、それを受けられないことによる不安から「引きこもり」となるなど「心の病」を併発していることが報じられている。

 行き場を失った患者さんが再度リハビリテーションを受けられるよう「日数制限」の即時撤廃を求める。

 

 

 

青森県地図(県ホームページより転載 人口は2005年のデータより追記)